愛される美容室にはワケがある

美容室経営におけるコンセプトではこれが正しいという唯一なものが存在しているのではなく、多くのニーズそれぞれに応えるように様々なスタイルがあります。

人口密集地で安価で大量のお客様を短時間で回転させるカット専門チェーン店が大きく成長してきたのも、それを求めている多くの人とニーズがあったという事実を証明しています。

その一方では地域に根差してコアなお客様を獲得している、競合店の出現にもビクともしない美容室様が数多くいらっしゃいます。多くの広告費を投じて流動的な新規客を掴もうとするのではなく、ひとりひとりのお客様と生涯ずっと向き合っていたいと考える経営です。

どちらをおすすめするかと言えばもちろん後者です。確かにお客様のニーズに応えることは大切ですがそれだけに終わるのではなく、そこに喜びがあり、安らぎがあり、感動がある経営はあなただけでなくお客様の人生をも豊かにします。

そしてそのような美容室づくりに欠かせないのがお客様との深い関わりなのです。まずは新規のお客様としてご来店いただいたら心に響くサービスをご提供して再来店していただくことです。何度もご来店していただくうちにやがてひとりの美容師から頼れる友人へと関係が深まっていくのです。

どうすればまた来店していただけるのか・・・

再来店は信頼の証明です。最初の再来店ではクモの糸のように細い信頼の糸かもしれませんが、何本も何本もその糸をつむいでいくことで太くて頑丈な切れない絆を作ることができます。

来店周期を意識する

大切なことは、お客様がご来店されてどう変化するのかだけではなく、次の来店までの期間をお客様がどう過ごせているかということです。毎日メンテナンスのためにご来店いただくわけにはいきませんから、来店周期に合わせたご提案や、ホームケアのアドバイスが必要なのです。

例えば季節に合わせたご提案です。来店周期が3ヶ月であるお客様が今の時期にご来店されたら、梅雨明けして間もなくこれから3ヶ月は夏真っ盛りです。汗によって髪のボリュームがダウンしてしまいスタイルのキープが難しくなるのであれば、トップへのパーマをご提案することも考えられます。

また、かゆみや臭いなど頭皮のトラブルも起きやすい季節ですので、頭皮のトリートメントや毎日のホームケアのご提案が喜ばれますし、髪に与える紫外線の影響が気になるのもこの季節です。

季節によっては行事に合わせたご提案ができます。夏休みのレジャーや子供の学校行事にクリスマスなど、1年の中で様々な行事がありますし、それぞれのシーンによってニーズは変化します。それを踏まえた上で次回のご来店までにどのようなご提案が相応しいのかを選択します。

ご来店の度にお客様には様々な形で幸せを創り出すご提案をさせていただくのですが、最も避けなければいけないことは「飽きた」とお客様に感じさせてしまうことです。

退屈は最大の罪だ

という言葉もあるように、飽きさせないために常に変化する新鮮なご提案をしなければいけません。お客様がどこかワクワクしながらご来店いただけるようなご提案と結果をご用意できれば、再来店が途切れることなく生涯のお付き合いができる関係を築けるようになるでしょう。

お客様との関係を構築する

美容室としてご提供するサービス以外にもお客様とより親密な関係を築く方法があります。ご来店時にちょっとしたゲーム感覚を味わっていただく工夫はお客様のハートを和ませる効果があります。また、くじ引きなどの抽選をして景品をプレゼントする企画もお客様の笑顔を引き出す良いきっかけになるでしょう。

とある美容室では生バンドの演奏会を開催されています。美容室がお休みの日にプロのバンドを呼び、美容室の空間を利用してお客様たちと楽しいひと時を過ごすのです。もちろんお客様同士には初対面の方も多いのですが、生演奏や懇談などイベントをお楽しみいただいているうちに打ち解けていき、新しいお客様同士のつながりが生まれ、美容室を共通点とする大きなコミュニティの輪ができていくのです。

ほんの一例ですが、このようにお客様同士の出会いの場として美容室を活用することで、もはやお店とお客様という枠を超えた親密な人間関係を築くことができます。コミュニティの輪が広がれば、お友達を誘ってお店に足をお運びいただけるかもしれませんし、会話の幅もグンと広がり、よりリラックスした楽しい空間を作り上げることができるのです。

先ほどの飽きさせないご提案と同じことですが、飽きさせない美容室という意味でのイベント開催は特におすすめです。いつ行っても何ひとつ変わり映えのない美容室であれば、きっと理由なき顧客の自然消滅に歯止めがかからなくなることでしょう。

砂漠のど真ん中で何が求められているのか?

このようにお客様とは一生涯のお付き合いになります。新規に訪れたお客様はもしかすると白馬に乗った王子様かもしれません。「この方とは生涯のお付き合いをしたい・・・」という想いがサービスに新しい気付きを与えてくれるでしょう。

目の前のお客様が、例えば砂漠のど真ん中で道に迷ってしまい一人倒れこんだ旅人であったら、あなたは何をしてあげられるでしょうか?あなたが旅人にしてあげられることはたった1つだけというルールです。

もし私がその旅人(倒れたお客様)であれば力なく手を伸ばしながら枯れた声で「水が欲しい・・・」とあなたに懇願することでしょう。そこで冷たい水がいっぱいに入ったペットボトルをあなたが取り出して与えてくれたなら、どんなに高額な料金を要求されても喜んでガブ飲みすることでしょう。

しかし、これがお客様にしてあげられるたった1つのことでしょうか?

これはビジネスモデルの話ではなく、砂漠のど真ん中で水が欲しいという旅人に水を与えるという判断はもしかすると正解ではないかもしれないのです。なぜなら、旅人からは水を飲むことができて感謝されるでしょう、命の恩人だと崇められるでしょう、去りゆくあなたを笑顔で見送ってくれるでしょう・・・しかし次の日に旅人は再び灼熱地獄に苦しむことになるのです。

本当に必要だったこと、それは砂漠から連れ出してあげることです。海辺であれば飢え死にしそうな人に魚を与えるのではなく、魚の釣り方を教えなければいけないという例え話と同じです。

一生涯のお付き合いをする相手に「今だけ提案」をしてはいけません。根底に常にブレない価値をしっかりと持ち、お客様のハートを離さない新鮮なご提案をし、長いお付き合いをさせていただきたいという想いが結果として深い人間関係を築いていく正攻法なのではないでしょうか。

愛される美容室とは、愛する美容室・・・ですね。