美容室様が毎日お客様に幸せを提供して笑顔をいただくことができているのも、利益という血液があるからこそです。利益という2文字がお店から消えてしまえば、たちまち葉は枯れ、枝は朽ち、幹は根元から自然に崩れていくことでしょう。

そうならないために、今よりさらに売上を増やすために、いったい何が必要なのでしょうか?

売上 = 顧客数 × 顧客単価

お客様がゼロなら売り上げはゼロですし、1万人のお客様がご来店されてもすべて無料にすれば顧客単価がゼロとなりやっぱり売上もゼロです。つまりざっくりとした話になりますが、売上を増やすためには顧客数と顧客単価をあげていかなければいけません。

顧客単価を上げていくことは施術力や提案力といった内側の努力によるところが多いため、その努力に比例してどんどん向上していきます。しかし集客は外側へのアプローチとなりますので、どうしてもその努力に比例してお客様が集まってくれるとは限らないのが問題なのです。

割引で集客する手法

美容業界だけでなく、その他のビジネスにおいても集客の主流となっているのが
チラシ広告+割引セールの2本柱です。

家のポストには毎日のように様々なお店からカラフルなチラシが投げ込まれています。顧客リストや地域を限定して天文学的数量のチラシを印刷してバイトを雇うか業者に依頼してポスティングされていますが、そこに書かれている内容はどのお店もほとんど同じ「割引」です。

  • サンプル贈呈
  • 1つ買っていただければもう1つプレゼント
  • このサービスに加入していただければパソコンが1円で買えます

このような割安感を売りにしたセールスはもはや当たり前の世界になっていますね。10%や20%の割引ではまったく驚きもしませんし、大型ショッピングモールでは夏物のワンピースが9月には70%OFFになっていることも珍しくありません。

「それでは美容室も割引セールで集客してみては?」

よくある利益を度外視した格安商品で新規客を掴む手法は、その裏側で綿密に計算されたLTVが戦略として組まれています。これまでの顧客行動や購買活動を分析した上で確実に利益が残る販売戦略を立てた上で割引が行われているので、安易にこの手法をとることは危険であり、おすすめできません。
※LTV…ライフタイムバリュー(生涯顧客価値)

エサをまけば魚が集まってくるほど単純ではないのです。

売上が増えて利益が減る逆転現象

川の水というのは上流から下流へと流れていき、やがて海に辿り着きます。こんなことはランドセルを背負う前から誰もが知っていることですが、それでもある特定の場所では特定の時間に川の水が下流から上流へと逆流する現象が見られます。

安易に割引集客に手を出してしまえば、これら特定の悪条件がそろってしまい売上が増えているのに利益が減っているという逆転現象が起きてしまうのです。

Aさんはここのところ新規客が増えないことに悩んでいました。昔なら店を構えていたら自然にお客様が入ってきてくれたのに最近ではなかなかそうもいかない。施術力には自信があっても既存のお客様の口コミだけでは限界を感じていたのです。

そこでAさんは意を決して新規客を獲得するために期間限定の割引キャンペーンを行い、費用を捻出して美容室のある地域と最寄駅の周辺でチラシによる割引キャンペーンの宣伝をしたのです。

Aさんはそれから毎朝わくわくしながら出勤し、忙しくなりそうな予感に武者震いをしていました。昨日もおとといも先週も・・・最終的にはある程度の新規客にお越しいただいて売上が増えたものの、結局は利益が残りませんでした。

そもそも割引を行っているためにほとんど利益はなく、既存客の売上も割引キャンペーンによって利益率は減少、さらにチラシ広告の費用がかかってしまったという往復ビンタだったのです。

割引で集客する最大のデメリット

それでもAさんは施術力に自信があるので楽観的でした。「また再来店していただければ大丈夫」と大船に乗ったつもりでいたのです。その大船の名前は確かタイタニックだったのでしょうか・・・華々しく出港したもののその後の営業はさんざんな結果となってしまいました。

これまでご来店いただけなかったお客様が割引によってご来店いただけたその理由とは?

割引によってお越しいただいたお客様は、裏を返せばこれまで来店していただけていなかったお客様です。これまで来店動機がまったくなかったお客様にご来店いただけたその理由はただひとつ、

安さです。

つまり割引キャンペーンが終わって安さがなくなればすぐに失客してしまうお客様なのです。
「いやいや、施術力には自信がある。きっと再来店していただけるはず」
Aさんもそうでしたね。しかし割引によってご来店いただいたお客様にとって、あなたのお店の最大の魅力は安さでしかないのです。

仕事帰りに牛丼屋さんへ立ち寄ったサラリーマンは「本日限り牛丼スペシャル3万円」を絶対に注文しません。

100円ショップに来られたお客様は時計コーナーにある「今だけ限定販売!高級腕時計39万8千円」を絶対に買いません。

質よりも安さが欲しいお客様にとって最も喜ばれるのは安さです。割引集客の最大のデメリットとは、この質より安さを求めるお客様だけを集客してしまうことなのです。

すみません、売上の公式を間違えていました。

先ほど冒頭で売上の公式をざっくりと説明しました。

売上 = 顧客数 × 顧客単価

ここで地面に額をこすりつけてコレを訂正します。
(というかそのつもりで書いていたのですが・・・)

売上の本質とは、

売上 = 感動(顧客満足)

かつて野球界のスーパースターが引退するときに「我が巨○軍は永久に不滅です」という有名な言葉を残しましたが、なぜ不滅なのかと言えば、そこに感動があるからです。プロ野球ファンは野球の上手な人が見たくて球場に足を運んでいるわけではなく、そこに感動があるからこそメガホンを握りしめて大声をあげて親子で選手を目いっぱい応援しているのです。

なんだ、また精神論か・・・そう思われるかもしれませんが、これは100年前も100年後も変わらない原則であり、人が人として心を持っている限り、永久不滅の原理なのです。

存在価値

これからはますます安さではない価値=存在価値が美容室様には求められていきます。

  • 安いお店なら山ほどある
  • きれいなお店なら捨てるほどある
  • カリスマ美容師だらけで芋の子を洗うよう

そんな時代に必要とされるお客様にとってのオンリーワンにならなければいけません。

存在価値 = メニュー + 施術力

外側へのアプローチだった集客とは違い、存在価値を高める努力は内側へのPDCAサイクルですから磨けば磨くほど輝きを増してきます。※PDCAサイクル…Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Act(改善)

例えばメニューが最適な状態を保てているかどうか常にチェックしておかなければいけません。昔のまま手つかずの状態でいるとニーズからどんどんズレが発生していき、知らないうちに機会損失をしているかもしれません。しかもそのメニューはひとりひとりのお客様に対して臨機応変にカスタマイズできる状態が望ましいです。

提案力もまた日々のロールプレイングによる日常的トレーニングによって高めていくことができます。お客様の視点はもちろんのことですが、ロールプレイングによってさまざまな場面における多くの視点を体験することで、本番においてもより広い視野をもって営業に取り組むことができるようになるのです。

施術に使用する材料や手順についてお客様目線で分かりやすく解説してさしあげることは、施術に対する不安要素を取り除くために必要なトークです。これをスタッフ目線で見れば1000回目の説明で内心ウンザリしているかもしれませんが、新規のお客様の目線で見れば、それは初めて聞く話なのです。

視点を変えればすべての景色が変わります。世の中の大きな流れと個々のお客様のニーズ、そして未来、それらを360度の視点と五感で感じ、いつでも期待に応えられるよう内側の努力を続けていくことができれば、必ずあなたのお店はお客様にとって唯一無二の存在価値をもったオンリーワンとなれるでしょう。