もはや対岸の火事ではない!消費税8%へ

おそらくほとんどの方が消費税の引き上げは想定済みであったと思いますが、実際に具体的な時期と税率が決定されると「いよいよ」という落胆の声が多く聞こえ始めています。消費税は購入するほとんどの商品やサービスに上乗せされる税金ですから、出費の増加を抑えるために消費行動そのものが抑えられると考えられます。

美容室においては毎月ご来店をされていたお客様の再来店周期が延びてしまったり、普段からお使いのトリートメントメニューを遠慮されたりと、再来店周期が延びた上に顧客単価まで落ち込んでしまえば売上に大打撃を及ぼします。それでも消費税の納税のための面倒な消費税計算はこれまでと変わらず、労働時間はまったく減らないのに利益だけが下がってしまう結果になりかねません。

ところで消費税計算については個人事業主や法人の課税対象売上金額によっては、より簡略化した計算方法を選択することが可能です。本題に入る前に簡易課税についてご紹介したいと思います。

簡易課税とは?

消費税はお客様より一時的にお預かりしている税金ですから細かい計算の上で国に納税することになります。売上高に対して4%を掛けた金額から、仕入額の4/105を掛けた金額を引き、さらに地方消費税として25%を上乗せして納税するという面倒な計算がつきまとうのです。

しかし売上が5千万円を下回る個人事業主や法人は簡易課税制度という税額の計算を簡単にする制度を利用することが可能になります。あらかじめ税務署に届け出を済ませておくことで、面倒な細かい税額計算をすることなく、消費税の納税額を割り出すことができます。

どれくらい簡単かと言いますと、「みなし仕入れ率」という仕入の割合があらかじめ業種によって決められているので、それを売上に掛けるだけで計算は終わりです。

例えば卸売業であればみなし仕入れ率は90%と決まっていますので、売上高が2千万円の場合2千万円から90%を引いた金額に消費税額5%を掛けた金額が納税額になります。

みなし仕入れ率を利用するために実際よりも節税になったり、逆に納税額が増えてしまったりしますが、煩雑な計算から解放されるメリットが大きいと感じるのであれば、消費税増税というこの機会にいろいろと調べて導入を検討してみるとよいかもしれません。

消費税引き上げへの準備と対策

それでは確実に訪れる消費税の引き上げに備えて今から準備を始めましょう。後手に回っていては突然のアクシデントに対応することができませんし、何より精神的な余裕も生まれてきません。さらに増税の懸念材料から予想される再来店周期の長期化と売上の減少に対しても早急な準備が必要です。

表示物

まず看板や配布している広告、メニュー表に記載されている価格表示の変更は今からでもできる準備です。付け焼刃のような修正を施した看板などはお店のイメージを悪化させてしまいます。

「不潔な服装をしている人はきっと日頃の生活態度もだらしないのでないか・・・」と想像してしまうことと同じで、看板やメニュー表などに適当なその場しのぎが見え隠れするような修正をしていれば、お店のサービスの質までもが疑われてしまいます。特に看板や広告については、まだお越しいただけていない未来のお客様への名刺と同じですから、初対面にふさわしい身なりを心掛けたいですね。

早めにできることは早めに対応して済ませておけば、もっと違う部分に心配りができるようになるでしょう。

付加価値

消費行動が鈍くなるとともに売上が減少してしまうことを未然に防ぐために、まず既存のお客様に対してより高い価値を提供していき、より強固な信頼関係を築いておく必要があります。

カットのお客様にヘッドスパのサービスを加えてより高い満足を味わっていただく、カラーのお客様にトリートメントのサービスを提供してより質の高い仕上がりを実感していただく、または自店でしか受けられないユニークな付加価値によってお客様にとってのオンリーワンとなることで、その後の結果は大きく変わってくるでしょう。

お客様との信頼関係を築くために必要なものは割引でしょうか?価値でしょうか?

アピール

謙虚さに美意識を置く日本人は多くの場面で伝えるべきことを伝えられていません。目上の方を敬い、腰を低くして自己主張は控え、相手の立場をより高く立てる謙虚さはすばらしい資質ですが、相手のメリットを中心に考えた場合、時には自分の能力や可能性をしっかりと伝えることが相手のためになるケースがあります。

寒空に震えながら熱々の缶コーヒーが飲みたくて自動販売機にお金を入れ、赤く点灯したボタンを押そうとした時に目に入った注意書きに、
”申し訳ありませんが、期待されるほど熱くありません。”
と書いてあれば、きっと買わずにそのまま返却レバーを押し下げるでしょう。お客様が求めている熱々の缶コーヒーを提供できるのに、正確なアピールができていないためにお客様の幸せを奪い、失望させ、自分の売上も落としてしまう最悪の結果しか残らないのです。

何をアピールすればいいのか?

欲求を満たしたい、問題を解決したい、またその必要に迫られているお客様は、常にその願望を抑制するかのような疑問を抱えながら迷っています。美容業界に限った話ではなく、これは購買者の心理とも言えるでしょう。

  • Why me? (その商品やサービスは)私に必要なの?
  • Why you? あなたから買うの?
  • Why now? 今?

という3つの疑問であり、それに対してあなたはどれだけ正確に伝えることができているでしょうか?

カウンセリングを通してお客様の悩みや改善点を浮き彫りにしたなら「Why me?」の疑問に「このような理由からあなたに必要なものはこれですよ」とお伝えします。

またお客様から見た場合にあなたからしか手に入らない特別な価値がなければ、お客様はすぐに他のお店へと流れて行ってしまうでしょう。これが「Why you?」という疑問を解消してくれます。

では、お客様の行動が5年後、10年後であった場合はどうでしょうか?これでは現実的に経営が成り立ちませんね。さらにお客様の問題がより深刻化してしまう恐れがありますから、行動するなら【今】である必要性「Why now?」への答えも合わせてお伝えしたいところです。

また、伝える言葉も大きく影響してきます。
街角で配られていたチラシが玄関の隅にあるゴミ箱の中でクシャクシャにされていますが、

髪を芯から補修して指通りもなめらかになり、これまでに体験したことのない美しい髪へと生まれ変わります。

と書かれています。ありがちで曖昧なキャッチコピーは誰もが耳にタコができるほど聞かされてきたことでしょう。どうりで妻は玄関から最も近いゴミ箱にこのチラシを丸めて捨てたという訳です。しかし例えばこのような表現の代わりに、

当店が自信をもって使用させていただいている薬液は、原材料が高いために料金は安くありませんが、パーマやカラーですでに傷んでしまった髪であっても、使えば使うほど艶やかな健康毛へと蘇えらせる驚きの効果があります。

と書かれていたなら・・・。少なくとも昔からパーマによるダメージに悩まされてきた妻はチラシをゴミ箱へ捨てることなく、あとで読み返すためにバッグから取り出して机の上へ目立つように置いていたことでしょう。自分の悩みが解消できるかもしれない期待を持って・・・。

お客様の喜ぶ商品があるのにアピールしない、お客様を救えるサービスがあるのにアピールしない、お客様を幸せにできる能力があるのにもかかわらず、それをしっかりとお伝えしないことは隠れた罪だと言えるかもしれません。

チャンス到来

消費税が8%に上がることで誰もが出費を最小限に控えたいところですが、縄文時代の生活に戻って自給自足を始める人はいません。「ムダな出費はしたくない、でも必要なものにはお金をかけなければいけない、どうせお金をかけるならより価値の高いものへ・・・」という考えが正確な表現になるでしょう。

増税によってお客様の目はより厳しくなると同時に、より良いものを見極める眼力を手に入れることになります。つまりお客様は、立地や店舗の装飾、ブランド名やメディアのイメージ戦略などよりも、もっと大切な本物の価値を見極められるようになるのです。

これはチャンスです!

人はより良いものを親しい人と共有したい願望を持っています。共同生活をしながら進化を続けてきた人間の深層心理かもしれませんが、自分が感動するほど本当にすばらしいと感じたものは、すぐにでも家族や友人に教えたくなるものです。

お客様が本物の価値を見極められるようになればなるほど、あなたの持っている他店にない高い価値をお客様の方から自然に評価してもらえるようになってくるでしょう。

  1. 表示物の準備
  2. 他店にない価値の創造
  3. 伝える力

これらの準備が整った時、来年の4月が待ち遠しくなっているかもしれません。