およそ1年前・・・

spring

新緑の木々の葉をすり抜ける春風のごとく颯爽(さっそう)と登場した美容室がありました。弊社とは取引がありませんでしたので詳しいことは分かりませんが、最先端をいくデザイン、店内を流れる洋楽、ディスプレイやスタッフのファッションなど、おそらくターゲットは流行志向の強い20代前半の女性でしょう。まるで表参道や原宿、代官山にでも来たような気分にさせてくれる、そんな美容室でした。その美容室が今どうなったのかというと、

1年で潰れました・・・

お得意先でもない美容室をどうして観察していたのかというと、実はその近所に弊社とお取引のある美容室があったからです。この美容室様は開業されてすでに30年以上も営業されている地域密着型の店舗です。

誤解のないように申し上げますが、弊社とお付き合いがあるから繁盛して、お付き合いがないから潰れたという猫もまたぐようなナンセンスなお話ではありません。

最高の技術と最新のスタイルを提供した何もかもが新しい新規店が潰れ、昔から営業しているお店が今もなお繁盛しているその理由とは何なのか、そしてふたつの美容室の運命を分けた決定的な違いとはいったい・・・興味ありませんか?

誰にでも訪れる不安という壁

最近、

  • 新規客が入らない
  • 常連の来店頻度が減りつつある

そんなお悩みはないでしょうか?「こんな時代だからしかたないよね」ってあきらめていては何も始まりません。問題の原因を外側へ求めている限り解決することはありません。問題の原因が自分の中にあると気付いた時に初めてカチッと歯車が噛み合って、解決へと動き出すのです。

平家物語の冒頭にある、

祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり

という節は有名ですが、この「諸行無常」という仏教用語は「すべてのものは常に変化している」ことを表しています。全く変わらないと信じているものであっても実は常に変化し続けているのです。

例えば、河川は常に同じ場所を流れています。流れている場所は変わりませんが、そこを流れる水は一瞬たりとも一所に留まってはおらず、またそれを眺めるあなたの心もまた一瞬たりとも一所には留まっていないでしょう。

同じ瞬間は二度と戻ることはなく、常にあらゆるものは変化し続けているため、自分自身も変化し続けなければ、瞬きしている間に時代の激流に飲み込まれてしまいます。

何が変化したのか?

以前と比べて何が変わっていますか?

  1. 人口
  2. 年齢層
  3. 時代背景
  4. 地域住民の生活スタイル
  5. 商業施設の増加、減少

先日ニュースで896の自治体が2040年には消滅してしまう可能性があると発表されたばかりですが、多くの場所で人口が減りつつあるのは事実です。日本全体で見ても少子高齢化はとどまるどころか加速しているのではないでしょうか。

先ほどの「変化項目5つ」の中には、実は入っていなければならないはずの項目が入っていません。プロ野球のゲームで主審が声高々とプレイボールを宣言したというのに、ピッチャーがいないのと同じです。

変化しなければいけないものが変化していないのであれば、それは致命傷になりかねないのです。

あなたもまた無常である

小さな美容室がこれからの時代を生き残っていくためには、
誰に
何を
どのように
提供していくのかを明確にしなければいけません。
そして最も重要なことは「誰に」からすべてが始まるということです。

あなたがサービスを提供する店舗環境やお客様が変わっているにもかかわらず、何十年も変わらないサービスのままで良いのでしょうか?世の中には「変わらないことが素晴らしい」と思われているものがありますが、それは変わっていないのではなく、同じ歩幅で変わっているだけなのです。一流の工芸職人は歴史ある伝統工芸品を、その日の気温と湿度と素材の状態によって自在に技巧を変化させながら完成させているのです。

若年層がどんどん減っていき、地域の年齢層が高くなり、お客様の外出する機会も消費行動もどんどん減ってくるでしょう。そんな中高年齢層のお客様に対して何をしてあげられるのでしょうか?

お客様がこんなことを言っていましたが・・・

ここにとても興味深いアンケート結果があります。
いずれかの美容室をご利用されている方に、

どうしてあなたはその美容室を選ばれたのですか?

という質問をしました。美容室を経営していたり、勤めている方なら思わずゴクリと喉を鳴らしてしまうような質問ですね。

なぜ「興味深い」と申し上げたかというと、そのアンケートに書かれていた答えが次のようなものだったからです。

親しみやすいから
気持ちいい雰囲気で
アットホーム
大切にしてくれる
人柄がいい

などなど。お気付きでしょうか?技術的なことやメニューや営業内容とはまったく関係のない言葉が多く並んでいますね。「一番の来店動機は何ですか?」という問いに対する答えの56%は上記のような精神的な理由だったのです。

高度な技術や優れた商品力も大切ですが、お客様が美容室に一番求めているのは、
ソコじゃない!ということがよく分かりますね。

癒し + 会話 + 提案 + メニュー

昨年、東京オリンピックが決まった時に話題になった流行語に「おもてなし」という言葉がありましたが、これは単に頻繁に使われていたから流行語になったのではなく、誰もが忘れてかけていた日本人らしい価値観を表す言葉だったからこそ、心を動かされ、注目を集めたのではないでしょうか。

  • お客様にとっての癒しとは
  • お客様を和ませる会話とは
  • お客様を幸せにする提案とは
  • それを実現するメニューとは・・・

日本人が受け継いできた思いやりの心は世界遺産です。おもてなしの精神は誰かに学ばなくても日本人のDNAに刻まれているような気がします。

これからの時代を生き抜くキーワードは、お客様の心のそばに寄り添える
日本人らしさなのではないでしょうか。