現在の企業生存率がどのくらいかご存知でしょうか?
企業生存率とは会社を設立したのち、年数の経過とともに生存し続けることのできる会社の数を割合で示したものです。帝国データバンクによると10年で3割の会社が消え、20年経過するとほぼ半数の会社しか生き残ることができていないのが現状だということです。

時代に流される人、時代に乗る人

20年をひとくくりにする根拠はありませんが大きな時代の流れは見えてきます。

・1940年代の戦中戦後は貧しいモノ不足
・1960年代には高度成長期を迎えてモノ余り
・1980年代はバブル景気に突入してカネ余り
・2000年代はバブル崩壊後「失われた20年」でココロ不足
・2020年代は・・・?

現代の人々には何が求められているのでしょうか?森を見ながらも枝葉を見て、求められているものを知ることで時代に乗ることができるかもしれません。「時代に流される人」よりも「時代に乗る人」の方がビジネスでは成功しそうな気がしますよね。しかし実際は「時代に流される人」はもちろん「時代に乗る人」もこれからは生き残れないかもしれないのです。

かつて「お客様は神様です」という歌が時代を彩っていましたが、その影響なのかお客様に嫌われたら最後、どんなタタリがあるのかと恐れ「私はあなたの奴隷です」と言わんばかりの接客が当たり前だと勘違いしている人も多かったでしょう。商品は売れなくても媚びだけはトコトン売りまくっていたビジネスマンは今頃どうされているのでしょうか?

お客様に選ばれる時代から、お客様と生きる時代へ

ショーウィンドウに並べられたマネキンとなって自分が選ばれるのを待つだけの時代は終わりました。お客様のご注文に的確に応えるだけの美容師が優れた美容師だと思っていると、いずれお客様の奴隷と成り下がってしまいます。これは美容師であるあなたがかわいそうだという話ではなく、お客様がかわいそうだという話です。ペコペコと頭を下げてご機嫌ばかりとっていてもお客様は幸せになれません。

影響力のある美容師になりませんか?
・あなたの提案にお客様がドキドキして目を輝かせている
・あなたの提案がほしくてリピートするお客様が増えていく
・あなたの提案をいつでも従順に受け入れてくれる

こだわりを持った先の尖った施術のできる美容師こそがお客様に新しい価値観を芽生えさせ、強く求められ、これからの時代に影響力を持っていくのではないでしょうか。

「告白します、何が欲しいのか分かりません」

往々にしてお客様は自分が本当に求めているものが何なのかを知らないということがあります。例えばある日、私は「ディズニーランドに行きたい」と思っていたのですが、実際には「非日常的な空間で過ごす大切な人との思い出」が欲しいだけであって、ディズニーランドである必要はなかったんだと気付いた経験があります。もちろんディズニーランドも大好きなのですが、その日は天候や時間的な理由から別の場所へ行くことになり、結果的にディズニーランドへ行かなくても欲しいものを手に入れることができました。

いわゆる「ドリルを買いに来たお客様は、ドリルが欲しかったのではなく、実は穴の開いた板が欲しいだけだった」という例え話です。

ニーズを売ってはいけません
ニーズとはすでに顕在化している不足のことです。例えば、我が家の食卓からお箸が消えてしまったらフォークかスプーンで焼き魚を食べなければいけません。そうすると「お箸が欲しいなぁ・・・」と感じます。これがニーズですね。これまで使っていたお箸が不足してしまったので「お箸が欲しい」というニーズが生まれたのです。

お箸を売ることはニーズを売ることになります。「お箸が欲しい」というニーズを持った人にお箸を売ればきっと喜ばれることでしょう。そしてあなたもお箸が売れてうれしい。ではなぜお箸を売ることがよくないのか?

不足を満たすということは、元の状態に戻すということを意味しています。不足しているものを満たすことの他は何も期待されていません。なぜなら不足していないので何が欲しいのか分からないからです。つまりお客様のご注文に応えるだけの「元の状態に戻す行為」は結局プラスマイナスゼロ、お客様の成長を止めていることになります。さらに・・・

コモディティ化

お箸が欲しい人にお箸を売ることは、小学校に入学したばかりのランドセルを背負った6才児にもできることです。結果どうなるでしょうか?6才児にできるくらい簡単に商品が売れてしまうので、多くのセールスマンがお箸を売ろうと群がってきます。供給が過剰になっている状態ですね。そうなれば「お箸なんてどれも同じなんだからどれでもいいよ」となってしまい、販売する側は価格でしか競争できなくなってしまうのです。

「どこも一緒でしょ?あなたのところは安くしてくれるの?そう、じゃあまたね・・・」

価格でしか勝負してこなかったガソリンスタンドは20年前をピークに現在半数近くにまで減少しています。数々の法改正によってガソリン価格が下落する中で新しい価値を創り上げることができませんでした。

激安店のとなりに激安店をオープンさせますか?お客様の不足を満たすだけのこだわりを持たない美容室は、お客様の成長を止めるだけでなく、やがて価格でしか勝負できなくなってこれからの10年、20年は生き残っていけないでしょう。

アイドルになりませんか?

怪しいお誘いではありません。
こだわりを持った施術によってお客様の新しい価値観を創り上げることができれば、自然とあなたは影響力を持ち始め、ファンがどんどん増えていきます。価格では手に入らない、あなたからしか手に入らないこだわりというブレない「力」を持つことで、あなたは浮力を与えられたように人々から見上げられ、求められる存在になっていくのです。

アイドルになるということはファンを作るということです。例えば、芸能界で活躍する華々しいアイドルがファンの期待に応えようとすればこうなります。

・「CDがほしい」→CDが売れる
・「DVDがほしい」→DVDが売れる
・「写真集がほしい」→写真集が売れる
・「コンサートやってほしい」→チケットが売れる
・「グッズが欲しい」→グッズが売れる
・「もっといろいろ欲しい」→もっといろいろ売れる

ファンの期待に応えるだけでキャーキャーと喜ばれながらあなたという価値がどんどん売れていきます。CDが安いからといってまったく知らないアイドルのCDなんて買いませんよね。お金というものはただの道具であってそれを一番よく分かっているのはお客様です。本当に手に入れたいものに安さなんか求めてはいません。

あなたが好きなんです

結局はこれですよね。ビジネスであっても、そうでなくても、人と人がつながって生きているんですから「好き」ってことが最大のチカラを持っているに違いありません。あなたはお客様に好かれていて、あなたもお客様のことが好きっていう関係が理想的ですよね。

心当たりがありませんか?

憧れの大好きな人を目の前にすると「この人のことをもっと知りたい、わたしのことをもっと知ってもらいたい、もっと近づきたい、もっと一緒にいたい、もっと喜んでもらいたい、もっと会いたい、もっと・・・」、体温はわずかに上がり、ほんのりと頬を赤らめ、呼吸が浅くなってリズムが速くなり、心臓がドクドクして幸福感に満ちた心地良さに包み込まれていきます。

目の前にいる好きな人に、媚びを売ることもなければ作り笑いもない、あなたが八方美人になって誰かを演じることもない、小手先のテクニックで陥れるつもりもない、相手を無条件に信頼して心を開き、あなたはありのままで接しているはずです。

・あなたはどんな表情を浮かべているでしょうか
・あなたはどんな言葉をかけているでしょうか
・あなたはどんな態度で接しているでしょうか
・喜んでもらうためにあなたは何をするでしょうか
・また会ってもらうためにあなたは何をするでしょうか

お客様を好き嫌いで選別するのではなく、一旦あなたの大きな懐に招き入れてから、仕事にこだわりと責任をもって好きな人に喜んでもらいたいという姿勢と信念を貫けば、やがてあなたのまわりにはあなたのことが好きでたまらないお客様によって作られた大きな輪ができているに違いありません。