積み重ねる重要性
美容室経営はテレビCMを流している大企業のように1本の商談で1千万円や1億円が動くようなビジネスではありませんが、確実にお客様の顔を見ながらコミュニケーションをとり、直接お喜びの声を頂けるビジネスです。
1日のサロンワークは本当に多くの仕事を含んでいます。特に接客においては秒単位でやるべきことがあり、最も神経を尖らせて慎重に、またそれを表に現れないようにお客様と向き合わなければなりません。
実はお客様もまた秒単位であなたの仕事ぶりを見ています。美容室が作り上げなければいけない居心地の良い洗練された空間とは、そこで働く人もまた含まれているのです。
大リーグで今もなお活躍を続けるイチロー選手は、「小さいことを積み重ねるのが、とんでもないところへ行くただひとつの道だ」と語っています。何ともイチロー選手らしいコメントですが、これはすべての目標を持って努力している人々に当てはまる哲学ではないでしょうか?
美容室の接客も例外ではありません。小さなことをどれだけ積み上げることができたかでお店の売上は驚くほど変わってくるのです。接客とは消費して消えてしまうようなものではなく、常に積み上がっていくものなのです。
どこに?
お客様の中に・・・です。
300万円を失った事例
ある美容室様では多くの常連様に恵まれており、心の知れたお客様がいつもお見えになっていて、コミュニケーションに花が咲きます。ヘアやフェイスの話だけではなく、日々の出来事やご近所の話、プライベートな話までできるほどの深い関係を築けています。
そしてこのお店では以前よりメニューの中に、ヘアカラーの薬剤に加えることで刺激が軽減され、施術後の艶と手触りが格段に良くなり、退色防止にもなるわずか1000円のオプションメニューを取り入れています。
もちろんこのようなオプションは非常に満足のいく結果を得られるのため、お客様に確実にお喜び頂けるメニューですし、お客様との関係性が築けているこの美容室様では、お勧めすることでヘアカラーをされるほとんどの方にご利用頂いていました。
おすすめする際にはすばらしい結果と満足感をお約束して、それを手に入れたお客様の期待感を共有します。そして施術後には、いつもとは違うすばらしい仕上がりをご確認いただいて感動を共有していました。
しかし忙しさの中で自分でも気付かないうちにこの「感動の共有」が疎かになっていたのです。お客様に気に入っていただき毎回ヘアカラーでそのオプションをご利用いただいていましたが、ある日、お客様は通常のカラー代金よりも高い金額を払っていると内心で感じるようになっていて「オプションはもういらないわ」と言い出したのです。
この時点で慌ててオプションの感動を呼び戻そうとしたところで、それは単なる売込みにしか聞こえずに信頼関係すら崩壊しかねません。いつの間にかお店がそのお客様にとって居心地の悪い空間へと一変してしまったのです。
これはたった一人のお客様の話だとあぐらをかいている場合ではないことは、あなたが賢明な経営者であれば明白であるとすぐに気付かれたことでしょう。
このお店は3名で営業されており、1日平均10名のヘアカラーをされています。1000円のオプションメニューは小さな売上に過ぎないかもしれませんが・・・
1000円×10名=1万円(1日のヘアカラーオプション売上)
1ヶ月25日営業で25万円×12ヶ月=300万円(年間損失額)
お客様との共有
お客様の中に永続的に積み上げていかなければならないのは驚きと感動であり、それを一緒に共有し続けることで大きな付加価値を生み出すことができるのです。
ある調査では、顧客が離脱してしまう理由の68%が「顧客への無関心」であることが分かっています。誰だって「あの人はいつも私のことを気にかけてくれている」と感じたら相手に対する好感や信頼が生まれます。
逆に「この人は私のことをまったく分かってない」「あれっきり何もないのね」と感じてしまえば期待を裏切られた嫌悪感や苛立ちが噴出します。
先ほどのオプションメニューの例でいえば、
- すばらしい結果への期待感
- いつもご利用いただいている感謝の気持ち
- 他のお客様にも喜ばれている事実
- 優れた効果の確認
など、オプションメニューについて常にコミュニケーションの中で上記のような要素を取り入れてみましょう。そうすればお客様も心の中に積みあがった感動によって「次回もまた利用したい」と感じていただけるのです。
優れたサービスが感動を生むことに間違いはありませんが、最終的な目標は、優れたサービスをお客様に提供することではなく、お客様が優れたサービスを受けることができたと感じていただくことです。
すべてのサービスはお客様の満足のためにあるのです。
今日もまたあなたの素晴らしいサービスによって生み出される感動をお客様と一緒に共有しましょう。